
今回は北海道札幌市の「藍染坐忘」さんにお邪魔しています。札幌の中心部からほど近い場所にありながら、ここだけ時間がゆっくり流れているような、不思議な静けさのある工房です。北海道の自然の恵みをたっぷり受けながら、職人さんがひとつひとつ丁寧に染め上げる藍染の商品は、どれも唯一無二。今日はその魅力を、藍染師の熊谷さんにたっぷりうかがっていきたいと思います!

<今回お話を伺った人>

藍染坐忘 藍染師 熊谷さん
藍染坐忘の藍染師。もともとはシルクスクリーン染色を手がけていた職人さん。
<きらめくストア スタッフ>

シュウ
藍染ファン。北海道では数少ない藍染の工房である藍染坐忘と出会い、何年も前から愛用している。

本日はよろしくお願いします。
早速ですが、藍染工房をはじめられたきっかけを教えてください。

もともとは、のぼりや暖簾をシルクスクリーンで作る会社なのですが、あるとき、拠点を移すタイミングで、藍染を始めることになったんです。最初は小さな規模でしたけどね。

北海道で藍染って、ちょっと珍しいですよね?

そうですね。でも実は明治のころ藍の生産地として有名な徳島県から北海道に来た方が、藍の栽培をしていた時代があるんですよ。
その名残で札幌に「あいの里」という地名もある。この工房では徳島産の藍と、北海道伊達産の藍を使用しています。


やっぱり、藍染って難しいですか?

藍って生き物なんです。
甕(かめ)の中では微生物が生きていて、藍の状態って毎日違うんですよ。今日はどこまで染まるかな?って、毎回“藍と対話”するような感覚で染めています。
北海道は冬が厳しいから、甕の温度を保つのも一苦労で。電気毛布を巻いたり。日本酒を“ごはん”として藍に与えたりもします。

藍染のいちばんの魅力って何ですか?

やっぱり“一点もの”であることですね。藍の状態によって、同じように染めても微妙に色が変わるんです。紫がかって見える日もあれば、少し黄色みを帯びることもある。その時その時で、まったく違う表情になるんですよ。
それに、使っていくうちにシワや手のあとが染みに残ったりして、どんどん味が出てくる。一生ものとして、ずっと付き合えるんです。


工房にもいろいろなこだわりがあるんですね。

工房の中央には、深さ2メートルの甕が4つ並んでいます。下にはロードヒーティングも入っていて、冬でも温度を保てるようになっています。染めには、天然の地下水を使っています。


藍染って、見た目だけじゃない魅力があるんですね。

そうなんです。一点ものというだけじゃなくて、抗菌・抗臭といった天然の機能性もあります。たとえば夏に汗を拭く手ぬぐいなんかは、ほんとにおすすめですよ。
しかも、色が落ちてきたら染め直しもできる。そうやって、自分だけの“青”が育っていくんです。

手ぬぐいもすごくバリエーションがありますよね。同じ柄でも表情が違って、見ていて飽きないです。


模様の中には、すごく手間がかかるものもあれば、比較的シンプルに染められる柄もあります。でも、どんなに同じように染めても、一つひとつ違うんですよ。

それがまた藍染の魅力ですよね。個人的には“蛍”って柄が好きです。

これは人気ありますね。僕自身、もともと幾何学模様が好きで、つい最小単位のパターンを考えてしまうんですよ。だから、アイディア次第で染め方の幅がどんどん広がるのも面白いんです。


素敵なお話をありがとうございました!